2021年10月4日

「梅酒」と「ハブ酒」のよくある昔ばなし

「梅酒」と「ハブ酒」のよくある昔ばなし

シエと申します。Twitterをずっとがんばってます。@s_sh
それから、ショートニングというブログを長いことやっていて、電子書籍になってたりします。
お酒は飲みます。普通に飲みます。

さて、みなさん、梅酒とハブ酒(ヘビ酒)が、元はひとつのお酒だったって、ご存じですか?

梅酒好き、ハブ酒好き、どちらの方に聞いても、知らないと言われることが多いこの事実。
でも実は、沖縄にお住まいのおじいちゃんおばあちゃんの間では常識なんです。

ただ、みなさんその話をすると、一様に恥ずかしそうな顔をされ、「あんくるみゃーさんで(あまりよそで言わないでくださいね)」と仰られます。
ハブ酒好きとしてはあまり大っぴらにされたくない、そんな内容なんですね。

本当は広めないほうがいいのかもしれません。
ですが今回、このような機会をいただきましたので、沖縄のおじいちゃんおばあちゃんには申し訳ないんですけど、あらすじだけお話しさせていただきますね。

内容は、よくある昔ばなし。

梅の実のなる村の近くに、1匹の大きなヘビがいました。
ヘビの好物は梅の実で、毎年ひとつ残らず食べられてしまい困っていました。

そこで村人は、知恵を出し合い、ヘビを退治することに。
梅の実をごちそうすると言って、ヘビをおびき出すと、梅の実と一緒にお酒もたらふく飲ませ、酔っ払って寝入ってしまったヘビを退治したのです。

翌日、退治した大きなヘビをどうしようかとみんなで考えていると、なんともおいしそうな匂いがヘビからしてきた…。
恐る恐るヘビのおなかを開いてみたところ、とてもおいしい梅酒ができあがっていたというおはなし。

ちょっとグロテスクではありますが、これが梅酒、そしてハブ酒(ヘビ酒)の起源だと言われています。

さて、ここまで読んで、なんだか違和感がありませんでしたか?

この話でできあがったお酒って、「ヘビが飲み込んだ梅がお酒に漬かったもの」ですよね。
ということは、ヘビの中で、梅がお酒に漬かっている。
ヘビは器、いわゆる“ビン”の役割なんですね。

みなさんの大好きな梅酒は、この話を起源に、器であるヘビをビンに変え、純粋に梅だけを残しました。
でも、ハブ酒は、なぜか本来残すべき梅を捨て、器であるはずのヘビを残してしまったんです。

現在も沖縄地方を中心に、ヘビをお酒に漬ける文化が残っている土地が多くありますが、そのほとんどが「滋養強壮」の効果を謳っています。

でもこれって、元々は「お酒に梅の実の香りが移っておいしそう」というおはなし。
なのに、「ヘビを酒に漬ける」という誤った素材が伝わって、梅の実がどこかに消えてしまった。

困ったハブ酒側の人たちは、つじつまを合わせるために…。

そうなんです。
滋養強壮は、近年できた後付けの理由なんです。
梅酒に歴史あり。
そして、ハブ酒に知られたくない秘密あり。

沖縄に行く機会があったら、ぜひいい気分で酔っ払っているおじいちゃんたちに聞いてみてください。
赤い顔が、もっと赤くなるかもしれませんよ。

さて、ここまでのおはなしは、今僕が適当に考えたもので、すべてウソです。
みなさん、おいしい梅酒を飲んで、早めに忘れてくださいね。


〈プロフィール〉
シエ @s_sh
Twitter界の人気者。ニッチなファンが急増中。
短くてくだらない物語を綴った「ショートニング」というブログを長いこと継続中。
カードゲームの『ひらがなポーカーBOOKS』も発売中。
株式会社AND SPACEのニュースレターにたびたび登場し、その都度のテーマに合わせた独特な掛け合いを披露している。