梅の産地「みなべ町」と「南高梅」のルーツを知る
年間通してあたたかくすみやすい和歌山県南部町。海もあり、山もあり、自然溢れる町です。
一番の特産はなんといっても梅。
写真はみなべ町にある「みなべ町南部梅林」から撮影したもの。
みなべ町南部梅林は一目百万香り十里といわれ、日本最大級の広さを誇ります。所々山の斜面に見える青いネットは、全て梅の木の下に敷かれるものです。(※梅の実が落下した際に傷つかないようにと、収穫しやすいようになっています。)ということは…
写真で見える青いところ全てが「梅畑」であることが分かります。
よく見てみると遠くの山の斜面にも青いネットが。いたるところに梅畑があるのがこの南部町の最大の特徴です。
梅の中でも和歌山でシェア80%を誇る高品質の梅「南高梅」の名前の由来は、高田梅を高田さんが発見したことが最初の出来事。真っ赤に色づいた梅はそのまま高田梅と名付けられました。
この梅の品質調査に地元のみなべ高校の協力もあって「南部高校」と「高田」から名をとり「南高梅(なんこううめ)」と命名されたのが名前の由来なんだとか。
実は森川さんに会いに行く前に日本の役場で唯一存在する「うめ課」スタッフの方とも少しお話をする機会があったのですが、その方が話す和歌山の魅力には「人の温かさ」がありました。
ルーツを辿っていっても、地元の高校も協力するということは人と人が協力し合う温かい街なんだと繋がるものがあります。
ついに会えた梅農家、森川農園の森川さん
国道42号線を走ること10数分。是非この収穫時期に取材をさせてください、とお願いしていた森川農園さんの森川さんといよいよご対面。。
しかし、到着したのは予定の時間より1時間後のこと。スケジュールの関係で遅くなってしまいました。
付近に着くと軽トラに乗った森川さんが、「ちょっと待っとって!」と言ってバタバタと作業場に去っていきました。
忙しい時間に(もちろん時期的にもだが)来てしまった…遅刻したことの罪悪感もより膨らむばかり。。
そんな緊張とは裏腹にのどかな周囲の風景をパシャパシャ撮影して待つことに。
風景以外に森川農家さんのすぐ近くにあったのは、梅干しを干すためのビニールハウス。
細くて長い木で組まれた台のようなものに、ゴムが貼り付けられていて、その上にグレーのカゴが置かれているところもありました。
滑り止めのゴムで多少の風も凌げるのと、出来上がった梅干しはそのまま回収できるようなケースの上で天日干し、といったところでしょうか。効率的かつ機能的でなるほど…とジロジロ見てしまう。。
そうこうしているうちに、森川さんが作業場の裏から出てきました。
「どこで撮るの?」
話が早い、そして真面目。
私が電話口から感じたことです。
キチンとご挨拶する間もなく、撮影場所と取材場所を確認し車での移動ルートを確認。
先ほどの「みなべ町南部梅林」の写真にもあったように、梅の木は山の斜面にあるものが多く、車で通る山道は対向車が普通にはすれ違えない、一方通行かつ細い道ばかりです。(軽自動車でなければ難しい道が蜘蛛の巣のように複雑に続きます。)
現在は品種改良されて山の斜面でなくても育つ梅もありますが、本来これが梅の木にとっては最適な環境なのです。
目的地に到着。森川さんの梅畑前でカメラ設置準備。
「僕今日の取材の質問知らないよ!」
ごめんなさい、森川さん…。
スケジュール的にタイトだったの…と心の中で謝罪しながら、
「大丈夫です!森川さんの思うがままにお答えください!」と無茶振りを見せる私。。
森川さんは怒っているわけではないのです。真面目な方なのです。
そして取材がスタート。質問に対してナチュラルにかつ的確に受け答えをする森川さん。終わったときには思わず拍手。文句のつけようがないほどに完璧でした。
森川さんは、5年間社会で働いた後家業を継いで17年間梅農家として梅と向き合ってきた3代目の梅農家さんです。
畑は5箇所6箇所分かれており、畑の場所によって梅の実の状況も違うと、生き生きと話を進めてくださいました。
梅の木一本一本にショウがある
中でも興味深かったお話は、梅畑の場所によって生育が違うのはもちろんだが、同じ南高梅の木でも、一本一本によっても特性が違うということ。
「人間と同じだよ」と話す森川さん。同じ木なんてないんだと思うと、目の前にある梅畑がとても大きく感じました。
現地の言葉では「ショウが違う」と言うそうで、若木から老木までの幅があることは一つ大きな要因の一つ。若くて10年、いい実がつきだすのは15〜20年の木々、30年は老木。15年クラスの木がなんでいいのかは、1箇所に実のなる数が増えるからなんだとか。
ということは、必然的に十分な梅の実を収穫するには少なくとも15年〜20年はかかるということになります。改めて農業の大変さを肌身で感じる瞬間です。
それ以外にも写真にある梅の実は、日光によくあたる部分が赤く熟しています。
これは「紅南高」といわれ高価な取引をされるんだとか。しかし、この梅の木の幹に近い部分になっている梅の実は上部ほど日光が当たらないので青いものがたくさんなっていました。一本の木でも部分部分で役割が違うって、梅の木って面白いですよね。
今年の収穫について聞いてみた
世間一般的なニュースでは、今年は梅の実が豊作と言われていますが、実際はどうなのか森川さんに聞いてみました。
今年は群馬や九州の梅の実が不作で、和歌山の梅の実を仕入れるところも多いんだそうです。
昨年は確かに雨が降らず不作で梅の実の価格が高騰していましたが、今年もその昨年の不作の影響が続いていて「今年の梅の実をある程度確保しておきたい」というところも多く、価格自体はあまり変わらない状況なんだとか。
今年は梅雨入りが早く、梅の実の収穫が予定より早まったことでスケジュール調整が大変だったそうです。
もちろん畑仕事をする年齢の高齢化も進み、体力を使う仕事は自分たちの子どもにはさせたくないと思う農家さんも多い。
和歌山の華やかな産業というイメージとは一転、目の前にある問題はやっぱり大きいんだなと森川さんの話を聞きながら改めて感じました。
森川さんが思う「梅」の魅力
それでも森川さんにとって梅を育てることってなんなんですか?という質問に対して、森川さんが答えてくれたのは、
「楽しみなこと。」
先代よりもいいものを収穫したい、とも続けて話す森川さん。
野球をやっている2人の娘さんの日々の成長を誰よりも楽しんでいる森川さん。梅の実を育てることも同じように「楽しみなこと」なのでしょう。
まとめ
和歌山県、みなべ町の景色は、梅の花が咲く2月ごろになると梅の花の香りで一杯になり山の一面は真っ白になります。そしてこの梅の実がなる6月ごろには、桃のような香りに包まれる。梅がつなぐ、人と物語がここにはありました。
皆さんもぜひ、一度旬の季節に足を運んでみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人:高田 詩織
酒屋でお酒に日々ふれるアラサー女子。お酒の魅力や奥深さを日々感じています。目指すネタは「梅酒の概念を変えるもの」。知ってたことも知らなかったことのように感じていただけたらと思います!