2021年6月23日

ピンク好きさん集まれ!清少納言に学ぶ【梅の魅力】

ピンク好きさん集まれ!清少納言に学ぶ【梅の魅力】

四季があり自然豊かな国、日本

私たち日本人は古くから植物に関心を寄せ、行事や習俗に結びつけながら日々の暮らしに取り入れてきました。

お正月の門松にはじまり、3月はひな祭りの桃の花、5月5日のショウブ湯に、七夕の竹。
お月見のお団子の横に添えられるススキもそうですね。

絶対、もちもちのお団子にこっくり梅酒はぴったりだろうなぁ〜(…妄想)

これらはいずれも暦に基づく行事で、そこに用いられる植物は日本独自のものです。
日本人が大切にしてきた植物への愛がひしひしと伝わってきます。

植物好きの日本人ですが、なかでも人気の花といえば、こちらの「桜」。

桜の花の画像

森山直太朗氏のさくら(独唱)や、ケツメイシ、SAKURAドロップス、桜の時も桜ソングです。
出会いと別れの時期を美しく彩る桜に、特別な感情をもつ方も多いのでは。

ですが、
桜に負けず劣らず、寒い時期から健気に咲く姿が愛らしい「梅の花」にも根強いファンがいます。

今回は梅の花の“色”に関するお話です。

あの、清少納言は「梅推し」だった

梅の花の画像

新元号の「令和」も、出典は『万葉集』の梅花の歌集であるように、梅は古くから親しまれてきました。

古典の授業でも習う清少納言の随筆文学『枕草子』にも、梅にまつわる作品が多数紹介されています。

例えばこちら。
「木の花は、濃きも薄きも紅梅」
訳:木の花は、色が濃くても薄くても紅梅がいいわ〜

あと、こちら。
「歯もなき女の梅食いて酸がりたる」
訳:歯のない女が梅を食べて酸っぱがっているのって、みっともないわよね~

ちょっと、ちょっと
清少納言さん、何もそこまでいわなくても…と思いましたが、
美意識の高かった清少納言は、不細工の人に厳しかったようです。

そんな清少納言が『枕草子』の中で、早春に女性が身にまとう「おすすめ色」を紹介していました。
現代版流行色、トレンドカラーってやつです。

こちらの“紅梅色”

紅梅色の色見本

“紅梅色”は女性だけでなく、男性にも人気がありました。

“紅梅色”をはじめ、平安時代には梅の色から取った、薄紅梅(うすこうばい)や一重梅(ひとえうめ)、梅重(うめがさね)などの和色がたくさん生まれ、十二単などのかさねの色目にも使用されています。

せっかくなので、梅が名前に入った和色にはどんな種類があるかを調べてみました。

梅から生まれた和色はいろいろ

薄い〜から濃いまで色々ありますが、すべて「梅」入りカラーです。

WEBデザイン等にも流用できるようコード表も付けてみました。

#e5e4e6
R:229 G:228 B:230
C:11% M:11% Y:9% K:0%
やや灰色い紫系の色。白梅を表す和色
#e8d3c7
R:232 G:211 B:199
C:10% M:21% Y:21% K:0%
灰桜よりもやや黄みをおびている色に用いられる
#dcd6d9
R:220 G:214 B:217
C:16% M:17% Y:12% K:0%
霧のかかったような穏やかなピンク・梅色をおびた淡い灰色
#c099a0
R:192 G:153 B:160
C30% M45% Y:29% K:0%
紅梅の花のような赤みを帯びた鼠色で
百鼠(ひゃくねずみ)※のひとつ
#e597b2
R:229 G:151 B:178
C:12% M:52% Y:14% K:0%
早春に咲く紅梅の花の色のようなやや紫みのある淡い紅色
#f29c9f
R:242 G:156 B:159
C:0% M:50% Y:25% K:0%
一重咲きの梅の花のような明るい紅赤べにあか色
#f2a0a1
R:242 G:160 B:161
C:5% M:49% Y:27% K:0%
明るい灰みの赤系の色
平安時代高貴な身分の女性の表着(うわぎ)の色として人気
#e9546b
R:233 G:84 B:107
C:20% M:65% Y:65% K:0%
重なり合った紅い梅の花のような
明るい紅赤べにあか色のこと
#cc5959
R:204 G:89 B:89
C:20% M:65% Y:65% K:0%
赤みから黒みを帯びた茶色で暗褐色全般をさす
#b48a76
R:180 G:138 B:118
C:36% M:51% Y:52% K:0%
梅の樹皮や根を煎じた汁で染めたものやその色のことで
赤みのある茶色を赤梅染、黒ずんだ茶色を黒梅染という
#9b7853
R:155 G:120 B:83
C:39% M:53% Y:67% K:0%
梅の樹皮を使って染めた色で、赤みの茶色に用いられる
この色の染色として、加賀染が有名
#b38000
R:179 G:128 B:0
C:38% M:54% Y:100% K:0%
楊梅の樹皮で染めた色
様々な茶色が染め出されているが、一般に黄褐色に用いられる
#887938
R:136 G:121 B:56
C:55% M:52% Y:92% K:4%
名称上では茶の類となっているが、色相は萌黄系統
梅の花の色とは印象が違う色
#852e19
R:133 G:46 B:25
C:49% M:91% Y:100% K:22%
栗色を帯びた濃い赤茶色
栗梅は現代でも和服、洋服、化粧品など幅広く使われる
#302833
R:48 G:40 B:51
C:6% M:22% Y:0% K:80%
赤みがかった黒、または黒みがかった赤色
江戸前期から高価な小袖の地色として愛用された
#aa4c8f
R:170 G:76 B:143
C:42% M:82% Y:17% K:0%
梅紫とは、鈍い赤紫色のことで
紅藤べにふじをさらに紅色がからせた色合い

平安時代に愛された“紅梅色”はわかりやすい梅色ですが、中には「むしろ黒やん!!」って言いたくなる色までありました。
「あ〜そのデザイン梅の色にしておいて。」なんて適当なことを言ったらえらいことになります。

色の幅もおもしろいのですが、名前に使われている漢字の組み合わせから、なんとなくこんな色かな〜が想像できるのが和色の馴染み良いところです。

例えば、梅以外の和色もこんな感じ。

着物の柄にもよく描かれています
鶯といいつつ、写真の鳥はメジロ(あるある勘違いネタ)
小豆=おじゃみを思い出すのは私だけでしょうか

結構そのまんまです。

そもそも和色とは、平安時代以降の日本に昔からある伝統色のことで、なんとその数1,100種類以上!!
なかには「ふむふむ。これは●●色ですね。」と全色答えられる人もいるんでしょうね。

上記でまとめた梅カラーチップ“梅鼠(うめねず)”の説明で登場した「百鼠」のお話がおもしろかったのでご紹介します。

江戸っ子のイキな和色の楽しみ方

百鼠(ひゃくねずみ)なんて聞くと、なんとなく嫌〜な絵を想像してしまいますが、正確には「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」といって、膨大な量の茶色と、鼠色を表現した言葉です。

江戸時代後期、だんだん裕福になってきた町人や商人(庶民)が、衣装や身なりにお金をかけはじめます。

「あたいのこの着物みておくれよ〜ぅ。べらぼぅにイキだろう〜。」

「いや何いってんだい。お前さんの着物よりこっちの柄がいけてるじゃないか。」

「きぃいい〜〜〜〜。この泥棒猫〜〜!!!」

というように、どんどん贅を競うようになりました。

ここで面白くないのが江戸幕府です。
「庶民にそんなに贅沢をされては困る」と考えた幕府が「奢侈禁止令(しゃしきんしれい)」を出して、庶民の着物の色や柄、値段にまで規制をかけたのです。

この規制によって庶民が着られる着物の色が「茶色」「鼠色」「藍色」の限定3色になりました。

はい!これが限定3色です!!

ベーシックカラーで着やすくて落ち着く色ではありますが、
なんていうか…

全体的に地味

しかし、おしゃれの楽しさに目覚めた江戸っ子たちは、規制されようがだまっちゃいません。

利休茶(りきゅうちゃ)、煎茶色(せんちゃいろ)、梅鼠(うめねず)、銀鼠(ぎんねず)など、微妙な染め分けをした「茶色」や「鼠色」をどんどん作り出していき個性を競うのでした。

この時代にできた、「茶色」と「鼠色」の膨大な色数の総称を「四十八茶百鼠」と呼んでいたのです。

いつの時代もギリギリを攻めるのがイキなのかもしれませんね。

現代にいきる平安時代の流行カラー

平安時代に江戸にと行ったり来たりしましたが、
お次は、現代。

平安時代の女流作家、ファッションリーダーでもあった清少納言が認めた“紅梅色”が、私達の生活の中にも溶け込んでいることをご存知ですか。

大阪市福島区の野田阪神駅から、生野区の南巽駅までを結ぶ「大阪メトロ千日前線」。
なんと、こちらのラインカラーに“紅梅色”が使われているんです。

“紅梅色”を使った愛らしいカラーリング

なんで千日前が“紅梅色”なのかって…

それはね
ピンク系の店が多いから。

あと、難波・ミナミの繁華街にある鮮やかなネオンの色から来ているそう。

#e44d93
R:228 G:77 B:147
C:13% M:82% Y:12% K:0%

ピンク…

さすが大阪。
清少納言さんはどう思うかはわかりませんが、私はストレートで好きです。

まとめ

古くから四季折々の植物や、鳥や動物といった自然界に存在する色を愛でては名前を付け、暮らしに取り入れてきた日本人。
身近にある梅の花や、梅にまつわる色彩はいつの時代も私たちの生活を彩ってくれます。

飲んでよし、食べてよし、愛でてよしの「梅」をこれからもご贔屓に。


この記事を書いた人:小松
飲食に異常な興味を示すことを買われ、梅酒時間の編集に携わることになったディレクター兼デザイナー。高知出身で梅酒に限らずお酒全般が好き(決して、強くない)。週末に半日かけて料理をすることが楽しみ。