2021年11月30日

5メートル爆発!想像を絶する醗酵のチカラ【丸石醸造】

5メートル爆発!想像を絶する醗酵のチカラ【丸石醸造】

元禄3年(1690年)の創業以来、330年にわたり三河・岡崎の地で清酒醸造に携わり、清酒市場の拡大と共に成長・発展してきた丸石醸造。
アルコール飲料の多品種化、販売店主の高齢化、後継者問題など、国内のお酒需要が減退するい中で、低価格帯の一般酒、本醸造酒は下げどまる気配が感じられません…。
そんな逆境にめげることなく、現代表取締役の深田英揮就任後は、新商品の開発に積極的に取り組んできました。
特定名称酒『二兎』は、地元の名古屋地区はもちろん、関東・関西・海外へと販路を拡大。
それと同時に、オリジナルリキュールの開発にも着手し、今日までに開発した12アイテムを国内外のユーザーに楽しんでもらうために頑張っています。

在庫処分から始まった果実酒づくり

これまでに造ってきた、オリジナルリキュールは12種。
でも実は、もともとリキュール開発を始めたきっかけは、ポジティブと言えるものではなかったのです。
恥ずかしながら、「純米酒の在庫処理」のためだったのが正直なところ。
まず最初に造ったのは、昔ながらの純米酒を使った梅酒でした。
この梅酒が、予想以上に反響をもたらしたのだから、世の中なにがあるか分からないというのが本音。
味を占めたというとなんですが、梅酒に続いて第2弾・第3弾・第4弾と市場に投入してきたからこの今があります。

地元愛知県産の果実にこだわったリキュール

そんな、リキュール開発。
造り始めた当初は、他の蔵と同じことをしても市場に受け入れられないと判断して、とことん独自の路線を歩もうと決めました。
愛知県産の農産物にこだわり、高果汁で風味や食感までも楽しめることに重点を置いたリキュール造りを追い求めました。
例えば、「いちご」は、果実の繊維や種子まで楽しめるように…。
「なし」は飲むことよりも食感にこだわり、「グレープフルーツ」は果皮を入れて果実の特徴が十二分に感じられるように…。
そして、「もも」はとろっとした喉ごしが感じられるよう濃淳に…。
リキュールにする果実の加工方法に無理難題を指定して、果実そのものを楽しめる高級感あるお酒を市場に投下したいと考えました。

瓶詰めした後に起こった、予期せぬ醗酵爆発

商品数を順調に伸ばしていたある時、梅酒屋の上田久雄社長から「アルコール分3%のリキュールを」との開発依頼が来ました。
この話をいただいた当初は、アルコール分が低い商品ならいとも簡単にできるものと想像していました。
しかし、実際に製造を始めてみると、とんでもないことが起こってしまいました…。
それはまさかの、2次発酵による爆発
瓶詰めした後も酵母が生きていたため、発酵が止まっていなかったんです。
瓶の中でブクブクと発生し続ける二酸化炭素。
その結果、次第に瓶の栓が耐えられなくなり、噴き出した泡の高さはざっと5m。
梅酒屋のスタッフの方々に多大な迷惑をかけることになってしまいました。
その後は、同じ轍を踏まぬよう、加熱処理温度・加熱温度・保存試験・微生物検査などを強化して、ちゃんと製品化。
山あり谷ありでしたが、果実の風味を損なわない現在の商品が生み出すことができ、嬉しく思っています。

農産物加工の内製化で「品質向上」と「新開発」

そして今、私たちは、リキュールの開発だけでなく、農産物加工の内製化も進めています。
素材となる農産物の生産者の協力を得ながら、自社加工場の設立にも取り組んでおり、新鮮で旬な農産物を確保した上で、品質の高いペースト原料を製造。
1年を通して安定した商品が提供できる体制を築きながら、新しいスタートを切る準備も万全に整えています。
そのような流れの中で、新商品の開発にも着手。
例えば、熟して赤味を帯びた「いちじく」や、健康面も考えた「ジンジャー」を使ったお酒の開発にチャレンジしたり、その他の副原料も体にやさしい健康志向を意識しながら取り組んでいます。

「喜んでもらいたい」が、丸石醸造の本心と目指す先

これから先の目標は明確です。
末永く楽しんでもらえるリキュールを提供し、お客様一人ひとりに喜んでもらいたい。
これこそが、新たなチャレンジに取り組む酒蔵の「本心」です。
リキュールの開発を手掛けてから9年。
多くの皆様にご指導ご鞭撻をいただき、今の丸石醸造があると思うと心からの感謝しかありません。
これからも多くの皆様に楽しんでいただけるお酒を提供できるように、ひたすら日々精進していきます。


Profile
丸石醸造株式会社

江戸時代の元禄3年(1690年)に、徳川家康が産まれた愛知県岡崎の地で日本酒造りを始める。

『二兎』や『三河武士』などの日本酒製造のみならず、近年は果物感を強く感じられるリキュールを数多く開発するなど、酒文化の発展への貢献にも余念がない。